私が大学で勤務していた頃、海外留学から帰国した学生たちがよく口にする言葉がありました。それは、「文法や語彙のレベルではヨーロッパの留学生と変わらないのに、彼らの方が自分よりもよく話し、コミュニケーション能力が高かった」というものでした。
17年ほど前、私はスペインやフランスの外国語教育事情を調査する機会がありました。現地の外国語(英語)の授業の参観を通じて、児童たちが多少の発音の誤りや文法的なミスを気にせず堂々と英語を使っている姿に感銘を受けました。
ヨーロッパは多言語・多文化社会です。例えば、スペインのバルセロナ地方では、公用語のスペイン語とカタロニア語に加え、さまざまな言語が話され、多様な文化が共存しています。現地の小学校の先生によると、子どもたちは幼い頃から近所の公園で異なる言語や文化を持つ子どもたちと一緒に遊んでいるそうです。
私は、この「公園で遊ぶ」という経験が、ヨーロッパの人々の外国語への積極的な態度や高いコミュニケーション能力につながっているのではないかと考えるようになりました。コミュニケーションにおける言語と非言語の割合について、一般的に引用される研究では、言語(言葉そのもの)が約35%、非言語(ジェスチャー、表情、声のトーン、姿勢など)が約65%であるとされています。つまり、ヨーロッパの子どもたちは公園での遊びを通じて、非言語的手段を駆使しながら異なる言語や文化を持つ相手とコミュニケーションを図る方法を自然に学んでいると考えられます。言語が異なっても一緒に遊ぶことを諦めることはありません。時には遊具を奪い合いながらも共に遊ぶ経験が、異文化への寛容さや言語学習への前向きな姿勢を育てているのではないかと思いました。
先日、校舎内を巡回していると、低学年の子どもたちが外国人の先生とじゃれ合っている姿に出会いました。アミークスでは子どもたちが外国人の先生たちと臆することなく遊ぶ姿をよく見かけます。遊ぶというよりも「まとわりついている」というのが正確な表現かもしれません。特に低学年の子どもたちがそうです。私にとって、その姿は言語や文化が異なっていても、公園で一緒に遊ぶバルセロナの子供たちの姿と重なりました。
アミークスの子ども達を見ていると、日本の公立学校で普通に英語を学んでいる子どもたちとは「全く違う」と感じることがあります。その一つが英語に対する態度です。彼らにとって英語は学習するというよりも、ヨーロッパの子ども達が公園で遊ぶ時のように、コミュニケーションの手段と捉えているように感じます。これは、私自身が、あるいは多くの日本人が、文法中心の学習を通して、時には苦痛を伴いながら英語を学んできた経験とは大きく異なるように思います。英語を教科として「学習」してきた私の英語への態度と、彼らが「コミュニケーションの手段として学んできた英語」への態度は全く異なっているように感じます。英語習得のプロセスの違いが、英語への態度の違いを生み出しているのでしょう。幼児期からの英語イマージョン教育の意義と価値は、まさにここにあるのではないかと感じました。
私と異なるプロセスで英語を習得していく子ども達を見ていると、彼らの英語力に妬みさえ感じます(笑)。今年もアミークスの子ども達の成長を教職員一丸となって支えていきたいと思います。